2004年3月
2004年3月30日

 やっと「法科大学院適性試験問題集第二部・解法の技術」の本文原稿を書き終わりました。後は、私は前書きと著者校正のみ。たぶん、連休明けには本屋さんに並ぶはずです。やっと水深50mまで浮上した感じです。新鮮な空気が吸えるまで、もう少し!
 去年からずっとこの原稿のことが頭にかかっていて、苦しかったなー。問題文選定・作成に協力してくれたサクライくん・ツカモトくん、ありがとう。本文デザイン・DTPの一切を引き受けてくれたハセさんには大感謝! ホントに、この本はVOCABOWの総力を挙げて作ったようなものです。
 そう言えば、この間出した適性試験の解説ムックも好調な売れ行きだとか。法科大学院関係では、今のところ売れ行き第一位の大人気。苦労が報われたというか何というか…。この問題集もいい本だと思うので、皆さん使ってくださいね。でも、これが終わったら、今度はZ会と桐原書店の参考書。それに、講談社現代新書は二ヶ月も原稿出してない…。わー、ごめんなさい。すぐやります。

 ところで、今東京は桜真っ盛り。私の住んでいる所は六階なのだけど、真下にきれいな桜並木があるのです。上から見ると、まるで桜の花の雲! 「洛中洛外図」っていう絵があるでしょ、ああいう感じで桜色の雲の下に、下界がちらほら見える。豪華・豪奢な景色ですね。私は風邪をひいていたので、みんなでドンチャンやっている様子を部屋から眺めていました。
 ただし、いつもの春と違うのは、ちょっと静かで家族がメインなことです。会社関係・仕事関係の集まりはほとんどない。資料を読んでいたら、アメリカの90年代では労働時間がどんどん長くなってきたという記事がありました。いつリストラされるかわからないし、失業中の生活資金がいるし、というわけらしい。しかも、賃金は90年代後半に持ち直したとはいえ、70年年代のレベルに達していない。しようがないから、女性が働きに出て辛うじて家計全体の収入は下がらないけど、という状態。ニュー・エコノミーって景気のいい話ばかり伝わっていたのだけど、潤ったのはほんの一握りで、庶民の生活は大変だったんですね。
 昔、大学の読書会でマルクスの「資本論」を読んでいたとき、「労働者の窮乏化法則」というのを習いました。労働者はしだいしだいに賃金が減らされ、労働時間も長くされ、生活が困難になっていくのだとか。その頃の日本では、賃金も年々高くなる傾向になったから、「マルクスは間違っていた」なんて議論もあったけど、今見るとまさにその予言通りになっている。日本でも、知り合いの息子さんなんか、朝6時に起きて会社に行き、夜の2時に帰ってくる毎日とか。それでいて給料は安い。「大企業は俺の大事な息子を過労死させるつもりか!」って怒っていました。
 労働組合も昔のように力がないみたいだし、この傾向はますます続くのでしょうね。それに組合は正社員しか守らないから、臨時雇いやパートはますます差別される。こんな労働法無視の状態が許されていいのか、と思っちゃいます。韓国は45歳定年制になっているらしいけど、日本でも出向などで45歳を過ぎたら、実質的には、ほとんど元の会社にいられないらしい。ちょうど子どもが大きくなってお金がかかる年なのに、どうなるんでしょうね? この春の不気味な「静けさ」は、そんな背景があるような気がします。

 そんな状態を反映してか、世の中の雰囲気もずいぶん変わりました。前みたいに「個性」「感性」なんて浮かれている場合じゃないみたい。もっと、実際のパワーになる能力が求められているような気がします。人間関係や笑顔で世の中を渡る時代は終わり、これからは「コワモテ」のキャラがもてるのかも…。

2004年3月20日

 今年の春は早くて、窓から見える桜ももう咲き始めたというのに、きょうは雪まじりのお天気です。これを花冷えと言うんですね。
 私は相変わらず、原稿の海に沈んで、浮かび上がれません。それでも桐原書店の問題集の原稿はほとんど書いたし、旺文社の入試正解はそろそろ終わりだし、今やっている法科大学院適性試験問題集は2/3ほどまでこぎ着けたので、深海から浅瀬とまでは行かなくても、水深200mぐらいまでは、浮かび上がれたのでしょうか? でも、海面の新鮮な空気を吸えるまでには、まだまだかかります。潜水艦Uボートにいるような閉所感覚は続いています。

 そう言えば、原稿の合間に「指輪物語」の最終編「王の帰還」を見ました。アカデミー賞を受けたというのだけど、見終わってがっくり。気分転換にならなかった。全編、戦闘シーンの連続で疲れてしまいました。プロットもストーリーも凡庸。「指輪物語」ってこんなに戦争物してたっけ、と深く疑問に打たれてしまいました。
 お金も手間もかかっていることだけはよくわかるのだが、はっきり言って私はこの映画は嫌いです。というより、くだらない映画だと思う。私はファンタジーも戦争物も嫌いじゃない。「スターウォーズ」の最初は好きだし、「指輪物語」は20年以上も前に全編読んでいる。もう一つ、「ナルニア国物語」というのもあって、それも好きなのだけど、どちらにしても、こんなに戦争シーンだけが売りじゃなかったぞ、と思うのです。
「指輪物語」にしても、フロドが指輪を捨てに行く途中で、異世界の色々な存在と出会い、世界を広げていくことがメインの内容だったと思う。エルフやドワーフなど想像力をかき立てられる存在だった。でも、こんどの映画はそうじゃない。そういう異次元のキャラクターはちっとも面白くなく、単にどこかで見たきれいな人、勇敢な人の比喩程度のものになっている。逆に敵側の醜さと言ったら、これでもかこれでもかと強調される。この頃の少年漫画で出てくるドロドロベトベトの異世界の醜悪な怪物たちとそっくりだ。

 しかも、この中には巧妙に人種差別的メッセージが仕込まれている。「敵」側のファッションはいわゆるエスニック。アラビア風であったり、アジア風であったり。一方の「味方」側は西洋中世の正統的ファッション。これなら、日本人はむしろ滅亡させられる「敵」側にいるはずなのだ。こういう視覚的な人種差別メッセージは、昔「ディア・ハンター」などというアカデミー賞映画にもあった。ベトナム人がまるで猿の群のように描かれる一方、白人は「人間的な苦悩を持つ」存在として聖化される。こんな知性のない存在は、絶滅して当然だと言わんばかりだ。
 こういうのを見ると、やっぱりアメリカと言うところは(映画自体はニュージーランド製だけどね)基本的に白人支配の国だとつくづく思うね。白人はアジア人やアラブ人を支配して、恩恵を施してやっているんだ、という傲慢を感じて不愉快になる。そう言う意味で、この映画はブッシュ政権の戦争プロパガンダ映画にすぎない感じがします。後味の悪いのは、きっとそのためだね。これで、私はますます深海に沈められた気持ちになってしまいました。

2004年3月3日

 二月からずーっと原稿の海に沈んでいて、三日坊主が書けませんでした。まず、法科大学院適性問題解説、次に05年度版「頻出テーマのまとめ方」、さらに桐原書店「長文記述演習完成編」、旺文社「大学入試問題正解」などなど。今でも、まだ遊泳中です。いつになったら、表面に浮かび上がれるのかしらん? 深海魚になった私…
 一方で、vocabow受講生たちの活躍はすごいです。飛び魚のように鮮やかに飛び上がり、早稲田大学法科大学院・慶應大学法科大学院・駒沢大学法科大学院・國學院大學大学法科大学院・大宮法科大学院・明治学院大学経営学大学院・中央大学商学部社会人などに、次々に合格しています。合格者の面々を見てみると、最初課題を提出してきたときには、評価があまり芳しくなくても、受講を重ねてねばり強く努力した人たちが圧倒的に合格率が高い。大学院や社会人は志望理由書と小論文がポイントだということが証明されたようですね。今までに得た知識と経験を論理的に総合する力を学校側は審査しているということですね。
 これから、大学院や社会人入試を受けようという人たち!  人生経験と迫力だけでは大学院には行けませんよ。やはり、地道な努力をある程度の期間にわたって続ける必要があります。頑張りましょうね。試験直前になってからあわてないよう、早めの準備は言うまでもありません。