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●Section3 志望理由書の書き方

問題を見つけることから始める

 では、「将来の見通し」は具体的にどう書きはじめればいいのか? いろいろ言われていますが、最初にしなければならないのは「自分が取り組む問題を見つける」ことです。それを解決しようとすることが、これから自分がなすべきことになります。解決するためにどうするか? 大学に行って勉強しなくてはならない。「この大学のこの学部」に入って、基礎知識や方法を学ぶ。だから、「この大学のこの学部に入りたい」という順序になります。

志望理由書=自分が将来取り組む問題から始める

解決するには勉強が必要という順序

 もちろん、その問題を考え始めたきっかけを書くことも必要になるでしょう。始まり方は一人一人違いますから、「いつ」「どこで」そういう風に思ったか、という情報も必要になる。さらに、その問題をそのまま放置しているのではダメ。今まで、その問題を解決しようとしてどんな風に取り組んできたか、やってきたことの来歴も必要でしょう。もしこれまで一生懸命取り組んできたことが示せたら、これから大学に入っても、あるいはその先も懸命に取り組むだろう、と大学側は予想できます。

 それだけではありません。今までの取り組みで不十分だったり挫折したり、という体験も必要になるかもしれません。いろいろ努力してみたけどうまくいかなかった。だから、「大学で、もう少し知識や研究方法を学ばなければいけない」と切実に思うのだし、「その問題を解決するのに必要な知識や方法を教えてくれそうな大学に行きたい」と思える。つまり、成功したことだけではなく、失敗したこと・挫折したことも、充分に自己アピールになるわけ。マイナス転じてプラスとなる!

 うーん、ずいぶんいろいろなことを書かなければなりませんね。志望理由を書くって、けっこう大変なことだということがわかりましたね。多少複雑になりますが、今までの内容をまとめると次のようになります。

志望理由書の内容の順序

自分が取り組む問題を見つける

見つけたきっかけ

今までの取り組み(→不十分・挫折)

知識や研究方法を学ぶ必要

それを教えてくれそうな大学

その大学に入りたい

 ここで、一つ短い例を見てみましょう。今まで説明した要素・内容がどんな風に使われているか、見てください。

例)

 私は、大学で「風土と信仰」をテーマに研究していきたい。そのきっかけになったのは、中学時代の総合的学習で「隠れキリシタンの生活とその処罰」をテーマに調査したことである。(問題を見つける+きっかけ)

 それまで、隠れキリシタンは天草など日本の一部にしか存在しなかったと思っていたが、地元I町にも存在していたことがわかり、衝撃を受けた。史跡もあちこちに残っている。全国の広範囲の地域に隠れキリシタンが生活していたのだ。しかも、その信仰は元々のキリスト教のあり方からは大きく離れて、地域の在来宗教と一体化して、変化していったらしい。

 高校になって、郷土史を読み進めるなど、その流れを追っていくうちに、さまざまな信仰が日本に流入した後、それぞれの地域の風土と生活にあわせて変化しているらしいと気づいた。実際、日本の仏教では、僧にも妻帯を認めており、戒律をなくしている。これは、日本の風土や社会が、戒律による解脱(げだつ)という方法には合わなかったという事情があるかもしれない。しかし、知識が足りなかったために、それ以上追求することができなかった。(それまでの取り組みと挫折)

 私は全国各地について、このような宗教の導入とその変化のあり方を比較検討し、さらに探求してみたい。T大学には、…など社会学・宗教学にすぐれた先生がおられる。とくに、高校の時に読んだ…先生の「…」には…という意味で、大きな影響を受けた。それらのすぐれた教授陣がそろっている環境で、フィールドワークを中心として、宗教のあり方を深く研究していけるのではないか、と期待している。(大学への志望)

構造を説明すると…

 まず、第一段落は「自分が取り組みたい問題」を「大学で研究したい」という形で明確に述べています。しかも、そのきっかけを「そのきっかけになったのは、中学時代…」と設定しています。

 第二段落は、その「きっかけ」の続き。自分がどのように興味を持ったか、が説明されています。さらに、第三段落は「高校になって…」と自分のした取り組みや努力を描いています。しかし、「それ以上追求することができなかった」とちょっと挫折のスパイスを振りかけてあります。

 それに基づいて、第四段落では「自分が取り組みたい問題」を「宗教の導入とその変化のあり方を比較検討」と、第一段落よりさらに詳しく述べています。さらに、影響を受けた大学の先生を挙げて、そのもとでもっと研究が進められることを期待しています。つまり、表にすると次のようになるのです。

段落
働き
内容
1
 問題・きっかけ  「風土と信仰」、中学時代の総合的学習
2
 興味  地域の在来宗教と一体化(中学)
3
 取り組み・努力  日本の風土や社会との関係(高校)
4
 知識・研究法・期待  宗教の導入とその変化・大学の先生

一般化すると…

 このように、志望理由書を書くのには、一定の手順・構造があります。それにしたがって書いていくと、自分の書きたいことが整理できてくると思います。最初に、自分が取り組みたい問題、大学で学びたい内容を書きます。簡潔に分かりやすく内容を提示します。

 次に書くべきは、なぜ、それを学びたい・研究したい、と思ったのか、です。それに興味を持ったきっかけや体験を書きましょう。例のように、そのきっかけが「中学の学習」にある場合もあるでしょうし、もっと前の生活体験にある場合もあるでしょう。いずれにしろ、それが自分にとって、重要な体験であったことを強調する必要があります。

 さらに、そこで持った興味が、それからどう発展していったのか、も説明する必要が出て来るでしょう。継続して勉強したのか、あるいは、もう一度どこかのきっかけで出てきたのか、いろいろあるでしょうが、今の強い興味につながっているはずです。

 もちろん、その継続は不十分です。だからこそ、さらに上の学校で学習・研究をして行く必要があります。今の自分に何が足りないのか、を分析して、その部分を大学で得られる、という期待につなげます。もしかしたら、大学の説明会などで「この先生に習いたい」というお目当ての人が既にいるかもしれませんし、とくにこういう分野を深めたい、という特定の分野があるかもしれません。そうしたら、それを書いて、大学への期待につなげましょう。

添削の必要性

 どうでしょう? 何となくイメージが出てきましたか? イメージが湧いたら、後はどんどん書いていくだけです。ただ、一度書いただけで完成するわけではありません。何度も書き直して、添削を受け、さらに内容を深めていく必要があります。vocabowでの経験によれば、だいたい5回以上の添削が必要で、人によっては、もっとかかることもあります。つまり、一週間に一回書き直すとしても、1ヶ月以上は掛かるわけです。

  時間をかけて書き直すことは、悪いことばかりではありません。書き直しすると、いろいろ自分の進路を深く考えるようになります。しかも、書き直すには「この志望理由書を読んだ人は、どんな疑問を持つだろう?」と考えます。面接では、だいたい志望理由書を元に質問されるので、自然と面接対策にもなるのです。しっかり書く必要があるのです。